そして、硬直した。
 そこにいたのはヴィンスとは似ても似つかぬ赤毛の人狼の男だった。何やら申し訳なさそうな顔で立っている。
 イヴはきょとんとして夫人に顔を向けた。

「人違いのようですが」
「あら、よく見分けがつくのね」
「……ご説明いただけますか?」

 自然と低くなる声の震えを押さえつけ、イヴは尋ねる。夫人はイヴの目つきにも気づかず、つまらなそうに肩をすくめた。