魔法陣の輝きが急速に薄れ、顔立ちも定かではない人影は一瞬でかき消えた。イヴの髪がばさりと落ち、部屋は静寂の底に沈む。
 うずくまったイヴの喉から嗚咽が漏れた。
 両手で顔を覆い、ぼろぼろと零れる涙を必死で拭う。激しくしゃくりあげ呼吸もままならなかった。
 彼女は失敗した。
 魔力にも魔術式にも魔法陣にも遺髪にも時間にも、ありとあらゆる準備に問題はなかった。ならば原因は一つだけ。
 願いきれなかった。
 望みを叶えたいという祈りも、全てを踏みにじらんとする傲慢も、何もかもが足りなかった。