こうしてイヴは悲願を達成するための最後の一欠片を手に入れた。
 魔術式も必要な材料も全て揃っている。ロケットは簡単に開いた。中には確かに父と母の遺髪が入っていた。イヴは最も魂を呼び寄せやすい日取りを整え、着々と準備を進めた。
 これで正しかったのだ、と自分に言い聞かせる。一族の宿望を叶え不条理に奪われた両親を取り戻し偉大な魔術を完成させる。それの一体どこに不満がある?
 そうしてその日はやってきた。上弦の月が浮かぶ夜、イヴは屋敷の一室で、蘇りの魔術を行使すべく準備を整えていた。
 床に円く古代文字で魔法陣を描きその中央に遺髪を置く。明かりは一本の蝋燭の炎のみ。窓から月光が降り注ぎ、遺髪を照らしていた。あとはイヴ自身の願いと望みで魔術式を発動させれば成功するはずだった。