イヴはすでに投げ捨てられそうになっていた腕輪を引ったくり、胸元に握り込んだ。

「受け取れと言ったのだから私のものよ。返さないし捨てないから」
「慣れないことをするんじゃなかった……」

 ヴィンスがぼやいているがイヴは聞いていない。手の中の腕輪をまじまじと見つめる。
 それは白銀の輪に澄んだ光を帯びた蒼色の宝石がひとつ飾られていた。輪の部分には精緻な飾り彫が施されている。

「綺麗……」

 指先でそっと腕輪を撫でる。早速右手首に嵌めると、宝石が煌めいた。
 心の底に温かなものが湧き上がる。それに突き動かされるように彼に笑顔を向けた。

「ありがとう! 嬉しい!」
「……まあ、貴族のイヴに相応しいものかは分からないが」
「どうして? ヴィンスが私のことを考えて贈ってくれたものなら、相応しいに決まっているわ。次の舞踏会につけていく」

 腕輪を嵌めた右手を撫でさする。イヴは腕輪を、ヴィンスは彼女を、料理が冷え切るまで眺めていた。