それからの日々は穏やかに過ぎた。イヴは人間らしい生活を保ちながら魔術の研究に打ち込み、ヴィンスはそんな彼女の面倒を見ながら時々日雇いの荷物運びの仕事などをしていた。人狼は力持ちだということで重宝されているらしい。

「イヴ」

 ある日の夕食の席で、ヴィンスが切り出した。向かいで肉を口に運ぶところだったイヴはぴたりと手を止める。

「何?」
「えーと、その、だな……」

 彼は珍しく歯切れが悪い。落ち着かなさげに尻尾が小刻みに震え、視線もテーブルに落とされている。イヴがじっと待っており、冷えていく料理にちらと視線を落としたとき「受け取れ」と言って思い切ったように懐から腕輪を取り出した。

「腕輪だ」

 見れば分かることを口にするイヴに彼は口早に告げた。

「偶然給金が貯まったので街で見かけて似合うと思って買ってきた。深い意味はない。装飾品をあまり持っていないようだから一つくらいあってもいいだろうというだけだ。気に入らなければ捨てても構わない。いややっぱりなかったことにしよう」
「待って待って待って」