「……死者の蘇り」

 それを聞いた彼の耳がピンと立つ。

「は?」

 自分の専門分野になった途端、イヴは生き生きと話し始めた。血の気の引いた顔に赤みが差し、瞳が強い光を放つ。

「あのね、簡単に言うと、魔術的には死というのは肉体と魂の分離と位置付けることができるの。肉体が魂を結びつける力を失ったから魂は現世を離れていくということね。だから死者と全く同じ組成の肉体を用意してそこに呼び戻した魂を入れ直すのよ。魂の呼び戻しは今でも降霊術として確立されているわ。ただその魂を現世に留められるよう存在を確立するのは難しいことと考えられているのだけれど私は上手い方法を思いついたの。生まれ変わりとも思えるかもしれないし生前と何か変化が起きるかもしれないけれどそこはまだ途中で」
「一旦止まれ」

 ヴィンスが片手で顔を覆って首を横に振ったので、イヴは口を閉ざした。

「ご、ごめんなさい。つい夢中になって」
「いや、いい。子どものときからそうだった」

 言外に成長がないと言われているようで、こっそり肩をすぼめる。ヴィンスは顎に手をあてた。尻尾が何度か床を叩く。

「それなら、あのオークションに来ていたのも?」
「そう。両親の形見の、遺髪の入ったロケットを買うために参加したの。蘇生のためには、死者の体の一部が必要なのよ。それをもとに、魂の器となる肉体を創造するの」

 話しすぎないように気をつける。口が滑ると、延々と魔術について話し続けてしまうのだ。

「そこまで研究に入れ込むのは、ご両親のことか」