体が暖かくて柔らかいものに包まれている。
 爪先まで血が巡り、乾いていた喉が潤いを取り戻していた。
 イヴは重い目蓋をこじ開け、辺りに視線を向けた。
 そこは、しばらく足を踏み入れていなかったイヴの寝室だった。彼女はベッドに寝かされており、枕元には水差しとグラスが置かれている。手を伸ばしてグラスに水を注ぎ、慎重に口元に運んだ。
 体が回復したからか魔力も戻ってきている。
 飲み干したグラスを手元で弄んでいると扉が開いてヴィンスが姿を現した。今日の彼は体に合った長袖のシャツと尻尾穴のある獣人用のズボンで身を覆っている。きちんと仕立て屋に行ったようだ。
 しばらく何も言わずに彼を見つめる。彼も唇を噛んでイヴを注視していた。
 先に口を開いたのはヴィンスだった。

「……昔も研究に熱中しすぎて倒れていなかったか?」