身なりを整えて厨房へ向かうと、水音や調理器具の触れ合う音が聞こえてきた。両親が死んで以来、すべての使用人に暇を出し、ずっと一人で生活してきたイヴにとって、屋敷に自分以外の気配があることは落ち着かなかった。
厨房の入り口から中をうかがう。鍋を使ってスープを作っているヴィンスの背中が見えた。野菜の煮込まれるいい匂いが鼻先をくすぐった。
彼はイヴの父親の服を着ていた。男性の洋服がそれしかなかったためだが、全く寸法が合っていない。丈は短すぎて手首やくるぶしが丸見えになっているし、父親よりも筋肉があるためか、太腿や背中は窮屈そうだった。何より、小刻みに揺れる尻尾を通す穴がない。今は完全にズボンを破って無理やり尻尾を外に出しているので、着心地が悪そうだった。
今日、仕立て屋に行こう。
イヴが勝手に決意を固めて拳を握っていると、ヴィンスが振り向きもせずに声をかけた。
「そこで突っ立っていないで、中に入ってきたらどうだ?」
「気づいてたの」
頭をかきながら厨房に足を踏み入れる。彼の横から鍋を覗いた。野菜を牛乳で煮込んだミルクスープだった。
厨房の入り口から中をうかがう。鍋を使ってスープを作っているヴィンスの背中が見えた。野菜の煮込まれるいい匂いが鼻先をくすぐった。
彼はイヴの父親の服を着ていた。男性の洋服がそれしかなかったためだが、全く寸法が合っていない。丈は短すぎて手首やくるぶしが丸見えになっているし、父親よりも筋肉があるためか、太腿や背中は窮屈そうだった。何より、小刻みに揺れる尻尾を通す穴がない。今は完全にズボンを破って無理やり尻尾を外に出しているので、着心地が悪そうだった。
今日、仕立て屋に行こう。
イヴが勝手に決意を固めて拳を握っていると、ヴィンスが振り向きもせずに声をかけた。
「そこで突っ立っていないで、中に入ってきたらどうだ?」
「気づいてたの」
頭をかきながら厨房に足を踏み入れる。彼の横から鍋を覗いた。野菜を牛乳で煮込んだミルクスープだった。