主語も何もない、全く意味不明な日本語だった。
「今週末、笠木さんと美容室に行って髪を染めることにしたのですが、何色がいいのか迷ってまして」
説明してすぐに気付いた。
校則違反をしようとしていることを、話してしまった。
そのせいだろうが、由依ちゃんは答えに迷っている。
「えっと、毛先だけで、すぐに切るつもりで……その……」
どう言えばいいのかわからない。言葉が出てこなくなって、口を閉じてしまった。
「なるほどね。そっか……何色がいいんだろう。明るい色がいいと思うけど……ちょっとクールな感じも似合いそう」
さっきの戸惑いが嘘のように由依ちゃんは話してくれる。
「でも、円香ちゃんが髪染めたところを見れるのって、笠木くんだけ?」
由依ちゃんは不満そうに私を見てくる。
「えっと、写真、送りますか……?」
「違うよー」
それ以外に方法が思いつかなくて、首を傾げる。
「私とも遊ぼうよ。それとも、忙しい?」
「いえ、まさか。私なんかと遊んでくださるのですか?」
友人ができたこと自体が初めてな私にとって、誰かと遊びに行くという発想がなかった。
由依ちゃんはくすくすと笑っている。
「相変わらず面白いね、円香ちゃん。友達なんだから、遊ぼうよ」
それから瑞希ちゃんも加わり、日曜日に遊びに行くことになった。
◇
金曜日の放課後、校門で笠木さんを待つ。
月曜日のように、待っていることに変わりはないのに、来るとわかっていて待つのは、なんだか楽しい。
「……なに笑ってんだ」
笠木さんは不審者でも見るような目をしている。
たしかに、一人でいて笑っていたら不審者に思われるかもしれない。
でも、笠木さんともっと長く一緒にいられるのだから、頬も緩んでしまう。
「じゃあ、行くか」
「はい」
歩き始めた笠木さんの隣に駆け寄る様は、我ながら犬のようだと思った。
笠木さんも同じように思ったのか、口角を上げた。
「色は決めたか?」
「決まりませんでした……」
あれから瑞希ちゃんにも聞いてみたけど、どれもピンと来なかった。
「笠木さん、決めてください」
そう言うと、笠木さんは顔を顰めた。
「俺が?それじゃあ意味ないだろ。お嬢様が染めたいんだから、お嬢様の好きな色じゃないと」
「笠木さんが決めてくれた色がいいのです」
被せ気味に言ってしまった。
笠木さんを困らせるとわかっていたけど、それが本音だった。
「今週末、笠木さんと美容室に行って髪を染めることにしたのですが、何色がいいのか迷ってまして」
説明してすぐに気付いた。
校則違反をしようとしていることを、話してしまった。
そのせいだろうが、由依ちゃんは答えに迷っている。
「えっと、毛先だけで、すぐに切るつもりで……その……」
どう言えばいいのかわからない。言葉が出てこなくなって、口を閉じてしまった。
「なるほどね。そっか……何色がいいんだろう。明るい色がいいと思うけど……ちょっとクールな感じも似合いそう」
さっきの戸惑いが嘘のように由依ちゃんは話してくれる。
「でも、円香ちゃんが髪染めたところを見れるのって、笠木くんだけ?」
由依ちゃんは不満そうに私を見てくる。
「えっと、写真、送りますか……?」
「違うよー」
それ以外に方法が思いつかなくて、首を傾げる。
「私とも遊ぼうよ。それとも、忙しい?」
「いえ、まさか。私なんかと遊んでくださるのですか?」
友人ができたこと自体が初めてな私にとって、誰かと遊びに行くという発想がなかった。
由依ちゃんはくすくすと笑っている。
「相変わらず面白いね、円香ちゃん。友達なんだから、遊ぼうよ」
それから瑞希ちゃんも加わり、日曜日に遊びに行くことになった。
◇
金曜日の放課後、校門で笠木さんを待つ。
月曜日のように、待っていることに変わりはないのに、来るとわかっていて待つのは、なんだか楽しい。
「……なに笑ってんだ」
笠木さんは不審者でも見るような目をしている。
たしかに、一人でいて笑っていたら不審者に思われるかもしれない。
でも、笠木さんともっと長く一緒にいられるのだから、頬も緩んでしまう。
「じゃあ、行くか」
「はい」
歩き始めた笠木さんの隣に駆け寄る様は、我ながら犬のようだと思った。
笠木さんも同じように思ったのか、口角を上げた。
「色は決めたか?」
「決まりませんでした……」
あれから瑞希ちゃんにも聞いてみたけど、どれもピンと来なかった。
「笠木さん、決めてください」
そう言うと、笠木さんは顔を顰めた。
「俺が?それじゃあ意味ないだろ。お嬢様が染めたいんだから、お嬢様の好きな色じゃないと」
「笠木さんが決めてくれた色がいいのです」
被せ気味に言ってしまった。
笠木さんを困らせるとわかっていたけど、それが本音だった。