「私がいた世界では、『疲れている時ほど、空を見上げなさい』っていう言葉があります。下ばかり見ていないで、上を見なさい。普段は気づけないものが、そこにはあるからと」
何の本に書かれていたかは忘れてしまったが、確か、星空に関する写真集に添えられていた一文だった気がする。
疲れている時や忙しい時など、心に余裕がない時ほど、空を見上げてひと息つきなさい。
そこに答えがあるかもしれない。解決の糸口が見つかるかもしれないから。
そんな意味だったと思う。
「良い言葉ですね」
「そうですよね!」
「この世界で暮らし始めた頃、慣れない生活に余裕が無くなって、空を見上げない日が続いていました。これまでも、もしかしたら、流星群の日はあったかもしれないのに……。そう考えたら惜しい気持ちになって、その時にこの言葉を思い出したんです」
モニカが元いた世界でも、流星群はあったが、その時の天候や時間帯の関係で、必ずしも毎年見られる訳ではなかった。
それが、この世界では毎年必ず見ることが出来る。それも自分の目で。
人工的に生み出された星々とはいえ、本物と瓜二つの流星群を観ないのは、損した気持ちになったのだった。
「空を眺める余裕がないくらいに、目の前のことに手一杯になっていたんです。この言葉を思い出してからは、常に空を見上げられるくらいの余裕を持つ様にしています。そうすれば、いざ何かあった時、正常な判断を下せると思うので」
常に心に余裕を持たなければ、人は思考力や判断力が狭まり、正しい答えに辿り着くことは出来ない。
この言葉は、疲れている時ほど空を見上げて、心にゆとりを取り戻すようにしなさいという教えの様だと思った。
「貴女が目の前のことに手一杯になるのも当然です。貴女の世界とこの世界は、何かと勝手も違うでしょうし、ニコラも看なければならないので、大変だったでしょう」
「そうでしょうか……」
「そうです。これからはもっと私や周囲を頼って下さい。ニコラの母親も、私の妻も、貴女の他に代わりはいないのですから」
「はい……」
マキウスは空を見上げたので、モニカも一緒に見上げると、星が連なる様に流れていったところだった。
「今度はニコラも連れて三人で来ましょう。もう少し大きくなってから」
「そうですね! ニコラが大きくなったら、私とマキウス様も合わせた三人で来ましょう」
また二人の間には、沈黙が流れた。
それを破るように、モニカは「私……」と口を開く。
「本当は、今でも迷っています。私はここに居ていいのか。ニコラの母親として、マキウス様の妻として、ここにいるのが相応しいのか……」
マキウスが頭上に向けていた顔を、くるりとモニカに向けてきたところで、モニカはずっと胸に秘めていた思いを吐露したのだった。
何の本に書かれていたかは忘れてしまったが、確か、星空に関する写真集に添えられていた一文だった気がする。
疲れている時や忙しい時など、心に余裕がない時ほど、空を見上げてひと息つきなさい。
そこに答えがあるかもしれない。解決の糸口が見つかるかもしれないから。
そんな意味だったと思う。
「良い言葉ですね」
「そうですよね!」
「この世界で暮らし始めた頃、慣れない生活に余裕が無くなって、空を見上げない日が続いていました。これまでも、もしかしたら、流星群の日はあったかもしれないのに……。そう考えたら惜しい気持ちになって、その時にこの言葉を思い出したんです」
モニカが元いた世界でも、流星群はあったが、その時の天候や時間帯の関係で、必ずしも毎年見られる訳ではなかった。
それが、この世界では毎年必ず見ることが出来る。それも自分の目で。
人工的に生み出された星々とはいえ、本物と瓜二つの流星群を観ないのは、損した気持ちになったのだった。
「空を眺める余裕がないくらいに、目の前のことに手一杯になっていたんです。この言葉を思い出してからは、常に空を見上げられるくらいの余裕を持つ様にしています。そうすれば、いざ何かあった時、正常な判断を下せると思うので」
常に心に余裕を持たなければ、人は思考力や判断力が狭まり、正しい答えに辿り着くことは出来ない。
この言葉は、疲れている時ほど空を見上げて、心にゆとりを取り戻すようにしなさいという教えの様だと思った。
「貴女が目の前のことに手一杯になるのも当然です。貴女の世界とこの世界は、何かと勝手も違うでしょうし、ニコラも看なければならないので、大変だったでしょう」
「そうでしょうか……」
「そうです。これからはもっと私や周囲を頼って下さい。ニコラの母親も、私の妻も、貴女の他に代わりはいないのですから」
「はい……」
マキウスは空を見上げたので、モニカも一緒に見上げると、星が連なる様に流れていったところだった。
「今度はニコラも連れて三人で来ましょう。もう少し大きくなってから」
「そうですね! ニコラが大きくなったら、私とマキウス様も合わせた三人で来ましょう」
また二人の間には、沈黙が流れた。
それを破るように、モニカは「私……」と口を開く。
「本当は、今でも迷っています。私はここに居ていいのか。ニコラの母親として、マキウス様の妻として、ここにいるのが相応しいのか……」
マキウスが頭上に向けていた顔を、くるりとモニカに向けてきたところで、モニカはずっと胸に秘めていた思いを吐露したのだった。