叶人へ


おばあちゃんみたいな年寄りと暮らすことになったとき、嫌でしたか?
子供には選択肢はない、従うしかないというような状況を作り出してしまって、ごめんなさい。


ここに来たときの叶人は、とても寂しそうでした。
お母さんと別れ、ずっと一緒にいたお父さんとも別々に暮らすことになった叶人は、ずっと寂しそうでした。


自分がこの世に必要ないんじゃ……って思っているように見えました。


……なんて言ったら、勝手に決めつけるなって怒られるかもしれませんね。


でも、そう見えたから、そうじゃないよってことを知ってほしかった。
叶人は、一人じゃないんだ、と。


だから、おばあちゃんは叶人に「居てくれてありがとう」と言うようにしました。


わざとらしかったかもしれませんが、物をなくしたふりをして、叶人を頼ったりもしてみました。


それが少しでも叶人を救ってくれていたら幸いです。


おばあちゃんは、少しの間でも叶人と暮らすことができて、とても楽しかったです。


叶人はもう、自由の身です。
おばあちゃんのことは気にせず、好きなように生きてください。


ただ、これだけは覚えておいてください。


何があっても、おばあちゃんは叶人の味方です。
叶人の幸せを願っています。


松原珠代