「私だってサークルの作り方なんて知らないし、無理だよ」
「でもほら、光夏は賢いから、一緒に考えてほしいなーなんて」
 のほほんと言う春乃の言葉に、私はぐっと唇を噛み締めた。
 私は賢くなんかない。本当に賢かったら、あんな失敗をして、こんな情けない状況になんかなっていなかったはずだ。私は馬鹿だから失敗したのだ。
「……私には、無理。でき……」
 できない、と断ろうとしたとき、静かな声が鼓膜を震わせた。
「光夏」
 千秋の声だった。ゆっくりと目を上げる。
 子どものころと少しも変わらない、透き通るような無垢な瞳が私を見つめていた。昔はこの綺麗な瞳を宝物のように大切に思っていたけれど、今はこの目には映りたくない、という気持ちしかない。
「一緒にやらない?」
 口下手な千秋は、いつもひどく簡潔に、伝えたい要件だけを言葉にする。はたから聞けばそっけなくも思えるけれど、実はその短い言葉の中にたくさんの気持ちが隠れていて、今にも溢れそうなほどに豊かに満ちていることを、私は知っている。そして彼はお世辞や社交辞令は決して口にしないということも。彼がそう言うのなら、本当にそう思っているということだ。