食卓に完成したばかりの朝食を並べていく。


「おはよ……」


すると、奏良が欠伸をしながら寝室から出て来た。


「おはよう、パパ。もうご飯できたから、雪音(ゆきね)起こしてきてくれる?」
「ん……」


寝ぼけているのか、奏良は私の背後に立って抱きしめて来た。


「大きくなったね、みーちゃん」
「は?なに、急に」
「ちょっとね、懐かしい夢を見たから」


その懐かしい夢の内容がなんとなくわかったけど、朝の忙しい時間に思い出に浸っている暇はない。


「早く準備して」


奏良に雪音を起こしてきてもらい、三人で食卓を囲む。


「料理の腕も抜群に上がったね。おいしいよ」
「ママのご飯、好きー」


二人の言葉が、私を笑顔にする。


あんなに生意気で、だけど素直だった十五年前の私は思い出となった。


あの日から小学校を卒業するまでは、毎朝みそ汁を作った。
中学に上がってからは少しずつ作れるものを増やした。


高校生になってからは、夕飯は私が作るようになった。


料理を作っている間は、ずっと奏良の言葉が胸にあった。


『誰かに料理を作るときは、相手の笑顔を思い浮かべる』


奏良は冗談ぽく誤魔化していたけれど、私の中では宝物だった。
それは今でも変わらない。


奏良と、娘の雪音が「おいしい」と笑ってくれることを願いながら、明日もご飯を作るからね。