「そうか…確かに、顔はよく似ているが声色がずいぶん違う。
それに、姫はもっと落ち着きがあって、しとやかなお人だったか……」


「ちょっと!それ、わたしは落ち着きがなくておしとやかじゃないって言いたいわけ!?」


「ああ」


「あんたねえっ」



少女はギッと琥珀のことを睨みつける。


それにしてもよく似ている。唄姫の顔がこのような表情をするので、何だか不思議な気分である。



「それよりお主の名は?ここがどこなのか知ってるのか?」


「話そらさないでよっ!
まあいいや…わたしは由菜よ。来栖(くるす)由菜(ゆな)
で、この森は一応、来栖家の敷地。まあ、わたしも初めて来たから、獰猛な野犬が住み着いてしまってるのなんて知らなかったけど」

「来栖…?やはり、拙者の仕える来栖家の遠縁の者か?
ならば姫とここまで似ているのにも納得がいく」



来栖という苗字は、琥珀の主、来栖深蔵(しんぞう)と同じものだ。


納得したと一人うなずいたが、由菜は訝しげに言う。



「来栖の遠縁って…遠縁も何も、うちは来栖の本家だけど。
それよりあなた、本当に忍者なの?」


「本当に、とは?」


「だって今の時代忍者って……」



由菜はしばらくジロジロと琥珀を観察し、やがてハッとした表情をした。

何かに気がついたといった感じであったが、口にするのを躊躇っているようで、目を泳がせている。



「言いたいことがあるなら言えば良い」


「あ、うん…」



痺れを切らした琥珀が促すも、あまり話すことに気乗りしない様子だ。

だが、やがて「落ち着いて聞いてね」と前置きして言った。