淡い光を放ちながらしだいに薄くなっていった琥珀の体が、完全に消滅した。



「……」



由菜はガクっと膝から崩れ落ちた。


ほんの今まで、彼の魂があったその場所には、もう何もない。



その後どうやって家に帰ったか覚えていない。



部屋で一人きりになった時、誰かが静かに泣き声を上げるのが聞こえた。

視界がぼやけ、息苦しくなってきたため、由菜はようやく泣いているのは自分だと悟った。



「こは……く……」



家の人に泣いて目が腫れているのを見られたら心配されるだろう。

そう思いはするものの、涙はまだ止まる気配がない。




来栖家の書庫には、来栖家についての歴史書が多数ある。

歴史書とは言うが、自伝や日記のようなものが多い。

中には物語チックに脚色された物もあるため、由菜は昔から同じ歳の子どもが小説だったり漫画だったりを読むような感覚で、それらの歴史書を読んでいた。


そして、中でも一番のお気に入りは『唄姫と忍びの話』だった。



唄姫が書いたという日記を元に、周囲の人間が物語らしくしたもの。


姫とその護衛をする忍び。二人は互いに惹かれあっていたが、立場が邪魔をして結ばれることはない。

ある日攻めて来た敵軍によって追い詰められた唄姫は、愛するその忍びと心中することを選ぶ。


後に白塚家の援軍が来たため、形勢は逆転して敵軍に勝利したが、二人はもう死んだ後だった。



内容はざっとそんなものだった。