「俺は生前、あまりに人を殺めすぎた。待っているのは地獄だろうな」
「そんなことないわ。もし唄姫様が天国にいるなら、きっと琥珀もそこに行く」
「はは……だとしたら、俺は姫を400年もお待たせさせたことになるな。もしあの世で巡り会えたら巡り会えたで怒られそうだ」
「その時はたっぷり怒られればいいわ」
由菜は持っていた荷物の中から、白い札を一枚取り出した。
ぶつぶつと呪文を唱える。
ふわり、と浮かぶような感覚がした。
手を見ると、淡い光が発せられており、しだいに透けていく。
「琥珀……わたしの婚約者ね、すごくいい人よ。今はまだ彼に恋愛感情とかはないけど、きっとこれから好きになるし、幸せになれる」
由菜が言うのが聞こえた。
「良かった」
琥珀の体はもうほとんど消えている。
「ありがとう、由菜」
最後の礼の言葉は、果たして由菜に届いたのであろうか。