琥珀はゆっくりと、懐の短刀を取り出した。
「分かり、ました……」
もう琥珀にもほぼ力が残っていない。
それでも、最後の力を何とか振り絞り、唄姫の胸元に短刀を突きつけた。
「一瞬です……これ以上、苦しまなくて、済みます」
グッと力を加えた。
「愛しています」
そんな言葉と共に。
最期の瞬間、唄姫は穏やかな微笑みを浮かべたような気がした。
まるで「ありがとう」とでも言うかのような。
「はあ、はあ」
息をしなくなった唄姫の上に倒れ込むようにして、琥珀もまた、そこで十七年の命が尽きた。
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