遠くなる意識の中、誰かが琥珀のそばへ駆け寄ってきた。


唄姫だった。囲まれていたはずなのに、どのように抜けたのだろうか。



「琥珀っ!琥珀!?お願い、しっかりして!」



泣き叫びながら自分の名を連呼する唄姫。

琥珀は彼女を何とか安心させようと手を伸ばす。



「うっ……」



だがその瞬間、彼女は大量の血を吐いて倒れ込んだ。

その後ろには、彼女に刺した刀を引き抜きながら、ニンマリと笑う男の姿があった。



「ああ、美しい姫は、血を吐き倒れる姿までもが美しいな」



恍惚とした表情で、刀に付いた唄姫の血を舐める。



「さあ苦しめ。俺を恨みながら苦しめ苦しめ!
姫が俺で頭を満たしたまま死に絶える……ああ、そう思うだけで興奮する」



男の言う通り、唄姫は苦痛に表情を歪めている。

琥珀がされたのと同様、急所はあえて外し、死ぬまで苦しませようとしているらしい。


どんどんと血が流れ、もはや助かる見込みは皆無だ。



「こは……く……」


「しゃべらないで……姫……」


「こはく……あいして、いますよ」


「姫……」


「さいごの、願いです……」



絶え絶えの息の中、唄姫は小さく、それでいてはっきりと「最後の願い」を口にした。



「私、を……あなたの手で……ころし、て」



あんな男の望んだ通りの死に方をしてたまるか。そんな唄姫の思いがひしひしと伝わってきた。