訝しく思いつつも、仕方なく一度地面に降り、手近な石を広い集める。

再び木に登り、野犬たちに気配を悟られないように近づく。


そして、野犬の急所に狙いを定めて、大きめの石を投げつけた。


石は見事に二匹の野犬に命中し、犬たちは血を流して倒れ込む。



琥珀は、木の上から声の主である少女の前へと降り立つ。



(この女、何とも妙な格好をしているな)



サラりとした黒髪は美しいのだが、着ている服は見たことのないようなものだった。

素材は薄手で、上半身は白い布が使われたものに赤い紐が首元で結ばれている。

対して下半身は、黒を基調に幾本もの線が十字に交わった模様の布が膝の辺りまで伸びている。その布は風を受けて、髪と一緒にヒラヒラとなびいていた。



「え、え、何?」



少女は戸惑ったように後ずさりし、琥珀と既に骸となった野犬を交互に見る。



「……その犬、殺しちゃったの?」


「こうしていなければ、今頃お主はこの犬共に食い殺されていただろう」


「でも!」


「拙者のしたことは、感謝されることはあっても、非難される覚えはないが。
……それとも何だ?見殺しにして欲しかったと言うのか?」


「っ、そういうわけじゃないけど」




少女は複雑な表情を浮かべ、しばらく考える様子を見せた後、頭を下げた。



「…ありがとう。助かったわ」



それから、野犬の骸の方へと歩み寄り、しゃがみこんで手を合わせた。



(今の今まで自分を襲おうとしていたものであっても、冥福を祈ってやるのか)