『琥珀っ!琥珀!?お願い、しっかりして!』
泣き叫びながら自分の名を連呼する女性。
琥珀は彼女を何とか安心させようと手を伸ばす。
だがその瞬間、彼女は大量の血を吐いて倒れ込む。
その後ろには、彼女に刺した刀を引き抜きながら、ニンマリと笑う男の姿……
「いやっ!」
由菜が悲鳴を上げ、琥珀は我に返った。
男が由菜に向かって包丁を振りかざそうとしていた。
逃げようにも、周りの男たちがそれを封じている。
(くそっ)
琥珀は意を決して木の上から飛び降りた。
包丁を持つ男の背後へ素早くまわり、手首を掴む。
そして、その手に持っている刃物を取り上げてから男の足を蹴り、体勢を崩す。
「ななな……何だ!?」
男は怯えたような情けない震え声を出す。
「琥珀……?」
「動くな、由菜」
琥珀はそっと由菜の肩に手をまわして抱き寄せる。
倒れ込んでいる男は、信じられないものを見るような目で琥珀たちの方を見ると、周りの男たちに指示を出した。
「お、お前ら!来栖さんを捕らえろ!何としてもうちに連れていく!」
指示を出された者たちは、互いに顔を見合わせて何かを相談している。
よく聞くと「包丁が……」とか何とか言っている。
琥珀が取り上げた包丁を持っているのを見て戸惑っているのかもしれない。
男は起き上がれぬまま、痺れを切らしたように声を荒らげた。
「お前ら!は、早くしろ!来栖さんを何としてでもぼ、僕のものにするんだ!」
「貴様」