「もちろん、気になるわ。
でもその人は、琥珀にとって大切な人で、できれば話したくないんじゃない?」


「それでも、質問すれば答えなければならない。そういう決まりだった」


「うん。でもちょっと怖くて」


「怖い?何故……」


「だって、あなたの愛する人、なんでしょ?
そんな人の話を聞かされたら……わたし多分、嫉妬する」


「由菜?」



言葉の真意を図りかねて顔を見ると、彼女は顔を赤く染めていた。



「それは、つまり」


「これ以上は言わない」



由菜はそのまま顔を琥珀がいるのと反対の方へ向ける。


たくさんの女兄弟と共に育ち、年頃の姫のそばにいたからといって、女心というやっかいなものは分からない。

いったいどのような反応をするが正解なのだろうか。


しばらく何も言えずにいると、由菜が顔を向けないまま再び口を開いた。



「……でも、琥珀が嫌じゃないなら、やっぱり聞きたいかも。その人のこと」


「話す。明日必ず話す」


「ん……」


「だから、拙者も一つ質問させてもらいたい」



数日前から気になっていたが、聞くに聞けなかったこと。

聞けなかった理由は……きっと由菜と似たようなものだ。




「お主の婚約者、というのはどのような男だ?」