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「今日は朝から元気がないようだな」



今日は高校が休みらしく、由菜は午前中にも関わらず森に来ていた。

だが、彼女のいつもの明るさは影を潜め、代わりに何度もため息をついている。



「そうかな……。まあ、ちょっと考え事してて」


「考え事？」


「うん。何で人は誰かに恋するのかな、って」


「……ずいぶんと難しい悩みだな」



予想していなかった考え事の内容に思わず苦笑する。



「何かあったのか？」


「うん……
実は、あんまり面識の無かった男子に『好きだ』って告白されてさ」



琥珀の動きが止まる。

器量は良いし、性格も明るく素直な由菜だ。身近な男が放っておくはずがないとは思っていたが、実際に言われると動揺してしまう。




「そ、それで何と返したんだ？」


「あー、うん……
ほら、わたし一応婚約者がいる身だから、そういう交際って禁止されてるんだよね。
だから断ったんだけど……」



そこまで言うと、由菜はかなり苦々しい表情を浮かべる。



「その人、断られたら物凄く絶望した顔してさ。かと思ったら『呪ってやる』とか『殺してやる』とか言ってきて」


「それは穏やかではないな」


「好きって気持ちって、簡単に恨みみたいな逆の感情に変わっちゃうんだなって思うと、何だか色々と考えちゃって」


「なるほど」



それでその簡単には答えの出なさそうな問いがでてきたということらしい。