間違っているから正す。

素直で純粋。悪く言えば単純な思考だが、琥珀はそこも含め由菜の魅力だと思った。



「そういえば、琥珀は忘れてたこと、何か思い出した?」


「生憎まだ何も……ふとした瞬間に思い出せそうになるのだが」


「そっか。でも、できたらこのまま思い出さないでいてくれると嬉しいんだけどな……」


「ん?」



ボソリと言われ、思わず聞き返す。

すると由菜は慌てたように付け加えた。



「あ、いやあの……
わたし、こうやって琥珀と話してるの楽しいからさ。もし色々と思い出して元の所に帰っちゃったら寂しいな……なんて」


「そ、そうか」



琥珀は、由菜の言葉にどぎまぎして目をそらした。

由菜がどう感じているかは知らないが、こちらはかなり照れくさい。




「ま、まああれだ。思い出したところで帰れるかはまた別だし、な」


「そうよね!あ、でもわたしは琥珀が帰るのを邪魔しようとか思ってるわけじゃないから、安心してね」



顔を少し赤らめつつ、早口で言う彼女は本当に可愛らしい。

男であれば、放っておかないだろう。



琥珀は、ほぼ無意識にこんなことを尋ねていた。



「由菜は、好いている男などはいないのか?」



聞かれた由菜の動きが固まった。と思うと、顔が一気に赤くなる。



「な、なな……何でそんなことを!?」


「あっ、いやその……興味本位というか」



(俺はいったい何を聞いているんだ……!)



自分でも何故そんな質問を口にしてしまったのか分からない。