「ちなみに、現当主は祖父。父は亡くなっているから、次期当主は兄かな。
琥珀は兄弟いるの?……って、確か家族構成について質問したっけ」
「兄が二人に姉が一人、弟と妹がそれぞれ三人ずついる」
「いちにーさん……じゅ、十人兄弟!?」
指折り数えた由菜が、素っ頓狂な声を上げる。
「母親は違うがな。何せ優秀な忍びの一族だから、血を絶やさぬよう必死だ」
「へ、へえ……時代を感じるわね」
由菜がそう苦笑いした後、二人の間に沈黙が流れた。
昨日お互いした質問は全て答え終わったようだ。
「じゃあ、明日の分の質問考えないと。うーん、どうしようかな……」
真剣に悩む由菜の横顔を琥珀は覗き見る。
(美しい……)
ぼんやりとそう思い、はっと衝撃を受ける。
慌てて頭を振った。
(そりゃあ可愛らしい顔に決まっている。何せ姫そっくりなのだから)
絶世の美女と謳われた唄姫。
彼女に似ている由菜が、可愛くないはずがない。
一瞬抱いた奇妙な気持ちを、琥珀は半ば自分に言い聞かせるように、そう納得させた。