理科というのはどうしてこうも覚えることが多いのだろう。まったく、参ってしまう。

 終礼のチャイムが鳴り、生徒たちが一斉にだらだらとした足取りで教室後方の向かっているそのさなか、一人だけ逆方向、すなわち教壇の方向へ向かう人影があることに、わたしは気が付いた。

 その一人、というのは、まさしく松本くんのことだ。プリントを手に、先生のところへ向かい、何か話し始める。質問だろうか?

「かおる、行くよ?」

 促されて、わたしはしぶしぶ教室を出る。考えてみれば他人の会話を盗み聞きするのも、あれだしね。

 五時間目が終わると、気分はじつにさっぱりしていた。今日は職員会議があるおかげで、六時間目を受けずにさっさと家に帰れるのだ。

 会議の関係で全ての部活が今日は活動なしとなり、放課後のグラウンドはひっそり静まりかえっている。