「お友達との昼食中でしたか。それはそうと、」

 普通、友人との会話を邪魔したことに対してこのタイミングでお詫びすると思うんだが。小神はまったく悪びれたところがない。「それはそうと」じゃないでしょ。

「あれは松本くんですね」

 野球場の方へその白く骨々とした人差し指を小神は向けた。実にまぶしそうにグラウンドを見つめている。

「昼休みの初めから、ずっと松本くんはあそこで練習してましたよ」

 そんなこと、とっくの昔に知っている、という意味を強調してわたしは言った。小神は特にわたしの口調を咎める風でもなく、

「四月になってから松本くんと会話はしましたか」

と尋ねた。

「ううん。会話っていうほどのものは」

「では、教室内で松本くんを見ていて、何か感じましたか」

「別に、今のところは。ただ今こうやって休み時間にも練習しているところをみていると、好感は持つよ」

 好感、ですか、とわたしの言葉を小さな声で繰り返してから、小神は二、三度頷いてみせた。

「いい兆候です」