この話が事実であるならば、松本大輔恐るべし。天下無敵、完璧人間の到来だ……。

「だけど全然威張らないよね、松本くんは」

「だよね。それにちょっと顔もいいかも」

「そうかな?」

 わたしは松本くんの顔を思い起こす。スポーツマンで印象がいいといえばいいけれど、特に美男子というわけではないのではないだろうか。

「かおるにはわからない良さがあるんだよー」

 二人はそう言うと、にやにやしながら野球場の方を凝視しだした。わたしもつられて、松本くんの姿を探す。数人いる中でも、彼は目立っていた。クラスの中ではあれほど息を潜めている彼だが、ひとたびグラウンドに出てしまうと突如オーラを放ちだすようだ。何かが他の部員とは違う。

 友人は声を潜めてこう言う。

「松本くん、彼女作ったことないらしいよ。野球部の奴に聞いたの」

 へえ、そうなんだ。