「小神先輩?」

 この二人には一年生の時に、「わたしに付きまとう迷惑な先輩」として小神のことを話したことがある。それを思い出したらしく、二人はなるほど、と頷いた。

「あの変人の先輩ね……」

「別に〝先輩〟って呼ばなくってもいいよ、あんな変人。敬意なんて抱きようもないし」

 二人の「小神先輩」呼ばわりにわたしは苦笑した。すると、彼女たちは首を横に振った。

「わかってないなあ、かおるは。呼び捨てで相手の名前を呼ぶってことは、敬意を示していない証拠であると同時に、相手に親しみを覚えている証拠だと思うよ」

「そうそう。わたしらはあの変人先輩と関わり合いじゃないってことを示すために敢えてよそよそしく〝先輩〟って呼んでるんだから。」