どうして松本くんはこんな学校に入ってしまったのだろうか。野球をもっとしたいのなら、部活に力を入れている学校に入学すればよかったのに。

「かおる、さっきから上の空だよね。お箸が止まってるよん」

「もしかして、野球場見てるの?」

 二人が顔を覗きこんできて、我に返った。

「べ、別に野球場をみているわけじゃ、」

「あ、かおるったら焦ってる」

 わたしの慌てた様子に、二人はにやにやとしだした。グラウンドの方をじっと見て、

「誰かのことを見てるなー?」

と問いただす。

「もしかして新しいクラスに気になる人がいるとか?」

 女子はすぐに恋愛に話をつなげたくなる生き物なのだということを、今思い出した。これはごまかさず、正直に話すべきだろう。新学年早々、間違った噂を流されたり、勘違いされては困る。今年は修学旅行もある大切な学年なのだから。

「違う違う! そんなんじゃなくて、これは小神のせいなのっ」