わたしが通された応接間は、リビングでもなければダイニングでもない、いわゆる本物の応接間で、革張りの品のいいソファの座り心地の良さ、小ぶりのシャンデリアの光の優しさ、壁に掛けられた絵画はわたしもよく知る印象派のそれを模倣して描いたものだった。

 サイドボードの上に並べられた海外土産と思しき人形や壺、花瓶なども、いやらしくない程度にさりげなく置かれている。

 ぐるっと室内調度を百八十度見物しているうちに、応接間のドアが開かれた。

「星野さん、お待たせしました」

 戸口に立っていたのは、すっかり頬のこけた小神忠作だった。

 半袖の白いポロシャツに深緑のパンツという出で立ちだが、一回り細くなったのが見て取れた。

 もともと細身の小神が、さらに肉をそがれている。

「先輩、お久しぶりですね」

 わたしは動揺を隠すように、ことさらに強い口ぶりで挨拶した。

 小神は無表情で――普段から表情に乏しい人間だから、これは強調する意味もないことなのだが――わたしの対面のソファに腰かけた。

「私の家をご存じだったんですね。あまりにも突然来られたものですから、正直驚きを隠せません」

 驚いているようには見えない顔つきで小神は言った。