わたしがそのあと向かったのは他でもない、小神忠作の自宅だった。

 自転車を飛ばし、週末までに小神のクラスの担任教諭からあの手この手を使って聞き出した住所に向かう。

 やはりうちの学校は個人情報の規制が緩いのかもしれないと思わないでもなかったが、今はそんなことをとやかく言っている場合ではない。

 住所を書いたメモを持つわたしの手は少し震えている。

 なぜかって?

 もちろん、そこに書かれた住所が、この県内で知らぬ者はいない高級住宅街のそれだったからだ。

 実際のところ、三年生の先輩はたいてい小神の自宅のおおよその場所を把握しているらしい。

 会計委員の先輩に接触した際、その口ぶりから小神がいかに学年内で有名人であるかを知ることが出来た。

 それはいい意味でも悪い意味でも――成績優秀者として、お金持ちの坊ちゃまとして、そして奇人変人として。