それならわたしと松本くんは同類だ!というちょっとした親近感を覚えつつ尋ねると、

「さて、そこまではわかりませんが」

小神は首を傾げた。小神にもわからないことは存在するのだ。

 せっかく松本くんの人間らしい一面を垣間見ることができたと思ったんだけれど。

「私はほとんど毎日――そうですね、週に三日から五日は――彼の夢を覗き見続けました。それがちょうど去年の春のことです。つまりまだ私が二年生、あなたたちが一年生のころですね。ところが一学期のゴールデンウィーク明けから突如、それまでとは違うパターンの夢が出現しました」

「違う筋の夢、ですか?」

 ここで小神が言いたいのは、その夢が〝試験から逃れ、野球をする〟とは全く違った種類の夢を松本くんが見るようになったということに違いない。

 わたしはじっと、小神がその筋を説明するのを待つ。

 しかし折しも、高架上を急行電車が通過し始めたため、小神は口を噤んだ。

 時間にしてわずか数秒のことなのに、じれったく感じる。

 電車の通過する風圧でわたしたちの髪が揺れた。