◇◇◇

 夢の中で私は階段を上っていました。

 長い長い螺旋階段で、何段か上ると段の色が赤や黄色や青に変わります。

 上り切った先には、テストが待っていました。

 A4サイズの紙が何枚も重なり、机の上に置かれている。

 机はひとつしかなく、どういうことか受験者は私しかいないようでした。

 チャイムが鳴ると問題用紙を表に返し、問題を通読します。確か数学だったように思います。

 問題はさほど難しくはありませんでした。

 なぜなら、去年教わった単元の問題だったからです。

 夢の主はきっと私より一つ年下なのだろうとその時思いました。

 頭脳は私そのものですが、肉体は夢の主のもので、なかなか鉛筆が私の解くスピードに追いつきませんでした。

 何をモタモタしているんでしょうこの夢の主は、と思いましたが、まあそこは置いておきましょう。

 三問ほど解き終えてから、完全に鉛筆が止まりました。

 問題はまだまだあるのに――それも少し工夫さえすれば解ける問いばかりであるのに、夢の主の手は動いてくれません。

 その時です。下の方から、大勢の男の子の声が聞こえてきました。

 どうしてもそちらへと夢の主は気がそれてしまうようでした。

 鉛筆を置き、席を立つと、さっきまで上っていた階段の下が見えました。

 そこでは複数の少年たちが、ある者はグローブを手に、ある者はバットを手にし、和気あいあいと野球の練習に取り組んでいました。

 下に行きたい――そう夢の主は思ったのでしょう。

 階段を降りようと足を踏み出したその瞬間、強い風が吹き、さっきまで目の前にあった螺旋階段が崩れ落ち、片足だけさしだしていた夢の主、あるいは私はまっさかさまに地上へ落っこち――。

◇◇◇