結局その場で小神は話の続きを語らなかった。

 財布に優しい会計を素早く済ませてファミレスを出る。

 恐々とした雰囲気の中昼食を片づけたものだから、お腹がいっぱいになったのかどうかもよくわからない。

 気分としては消化不良を起こしている。

 昼下がりの町中はやや汗ばむくらいの陽気だった。

 春でこの気温なのだから夏になればどうなることやら、とわたしはため息を吐きそうになる。

「少し移動しましょう。人の少ない、静かな場所へ」

 わたしは小神に十分少々連れられ、町の中央部を流れる川辺へと下りた。

 真昼の太陽の光が川面に照って目を射る。わたしは目をそばめた。

 ざっと見渡したところ、ランニングに勤しむ中年男性の姿があるほかは、我々の話を耳にする者は誰もいない。

 十分程度歩いただけで脇の下がしっとりと汗ばんではいたものの、まだ伸びきっていない川原の緑が夏の遠さを物語っているようであった。

 蒲公英の黄が草間に見え隠れしている。

 百メートルほど先の高架上を、休暇を楽しむ親子連れを幾組も乗せた私鉄が、ゴトンゴトンと小気味いいリズムで走り抜ける。

 まだ梅雨の恵みを知らない葉たちが一斉に揺らめいた。