気付けばわたしは口を挟んでいた。

 黙って小神の話を聞くつもりでいたのだが、どうしても押さえきれなかったらしい。口が勝手に動いていた。

 小神が傷ついた――それも深く。それは今現在小神の話す口ぶりからして明らかな事実だった。

 それを「取るに足らぬ」と言わせてはいけない――なぜか、そんな風に感じてしまったのだ。

 わたしの唐突な指摘に小神は面食らった様子だった。目を見開き、わたしの顔を凝視する。

 口は半開きだった。率直なところ、わたしが口を挟むなんて思ってもいなかったようだ。

 そりゃそうだろう。わたしだってまさかこんなやや臭めの一言が口を衝いて出るだなんて予想だにしなかったのだし。

 しばらくするうちに、わたしが口を挟むまでの間小神の顔に浮かんでいた悲壮感が、わずかながら減退したようだった。

 こういう様子を「生気を取り戻した」というのかもしれない。目も普段通りの小神らしい目つきに戻っている。