「もしや、和奈。あの、あの……殿村くんに……。いや、違うわ、あんなチャラついた優男になんて、ほかのバカ女じゃあるまいし……そんな……」
「え? 好きかどうかって話?」
「あああぁぁ、言わないでいいわ。考えなくてもいいわ」

 すごい勢いで首を振り、頭を押さえる頼子。滑稽なその様子に、私は思わず噴き出してしまう。

「でもまぁ、特別な感じは……するかな。話しかけてもらえると嬉しいし、可愛い、って言ってくれるの殿村くんだけだし、言われるとやっぱり嫌な気はしないし。コンタクトだって、殿村くんに言われてなかったらチャレンジしなかっただろうし……」
「…………」

 頼子はすでに、ぐったりと脱力したような目で私を見ている。
 好きかと言われれば、好きだ。恋愛感情かどうかは、まだよくわからないけれど。

「これって、そうなのかな?」
「巷では……そうでしょうね」

 演技は続いていたらしく、頼子はガクッと膝から崩れ、私の机に突っ伏した。