「いってぇ! 俺の唯一の取り柄の顔に何すんだよ」
「唯一だとわかっているだけ利口だわ」
「そんなことしてくんの、今町だけだよ」

 ようやく離された頬をさすり、涙目で片目をつむる殿村くん。学年の人気者にこんなことをするのは、本当に頼子くらいだ。

「ところで今町さ、お守りストラップの緑とか持ってない?」

 そこで話題を変えて、パンと手を打った殿村くん。バッグをこちらに見せて、束になったそれらをアピールした。

「は? もしかしてこれ、あのコンビニの? あんな作られたブーム商品にのっかって律儀にお金を落とすなんて、人がいいわね」
「いいです、もう今町には聞きません。ねぇ、和奈ちゃんは緑持ってない? 俺、最近黄色ばっかり出てさ。黄色の呪いにかかってんの。だから緑持ってたら、黄色と交換しない? あと1色で全部そろうんだ」
「ごめんね、オレンジしか持ってなくて」

 そう謝ると、殿村くんは「そっか」と言って顎に手を置いた。

 コンビニのガチャガチャでの限定企画もので、しかも7色集めたら願いが叶うというご利益つきのストラップ。SNSでも広がり、品薄になるくらいブームになっていた。

 私は興味半分で1回だけ引いて、偶然にも目当てのオレンジが出たからそれで満足しちゃったのだけれど。