「でも、最近ちょっと変わったね、和奈。眼鏡を外したことだけじゃなくて、“私なんか”って言わなくなったというか」
「そうかな?」
「はよ、今町。和奈ちゃん、ひどいよ、俺を置いていくなんて」

 ちょうどそこに、教室に遅れて着いた殿村くんが寄ってきた。バッグについているミニお守りストラップがまた増えている気がする。全七色のはずだけれど、数えたらすでに六色になっていた。

「そ、そういうつもりじゃなかったんだけど……」
「嘘だよ。ていうか、和奈ちゃん、目の色素薄いよね? 茶色がかってて、きれいな目。眼鏡なしだとよくわかる」
「ほーら、殿村くん。息をするように口説かないの」

 どんどん近付いてきて私の顔を覗きこんできた殿村くんの額を、頼子が押してガードする。

 私はちょっと赤くなってしまったものの、頼子の強い力で眉が上がって変な顔になった殿村くんを見て、
「アハハ」
 と思わず笑ってしまった。

「何? そんなに変? 俺の顔」
「うん、変」

 そう言うと、頼子が、
「もっと変にしてあげる」
 と言って、殿村くんの頬をつまんで引っ張った。

 歪んだ顔を見て、頼子は楽しそうに笑っている。