横を通りすぎていったほかのクラスの女子が、
「殿ってば、そんな勘違いさせるようなことしちゃダメだよー」
 とクスクス笑いながら私を横目で見た。

 少し牽制しているようなその視線に、私は居心地の悪さを感じ、
「それじゃ、先に教室行くね」
 と殿村くんから離れて、小走りで教室へと入る。

「おはよう、和奈。あら、いいじゃん、顔がすっきりして」

 すぐに私に気付いた頼子が微笑みながら近付いてきて、さっきの殿村くんみたいに頭をポンポンとなでた。

 私は照れながら、
「おはよう……ありがとう」
 と俯いてお礼を言う。

「あーとーは」
「へ?」
 顎をぐいっと上に向けられ、頼子はニッと笑った。

「その俯き癖をなくしたら完璧ね」

 今日もひっつめ髪、しわひとつないシャツのボタンをきっちり上まで留めた頼子は、凛とした顔で容赦なく言う。私は、苦笑いを返した。