なぜだろうか、最初の頃と真逆のことを思っているし、言っている。

 自分の気持ちの整理すら追い付かずに、ひと息でそう訴えかけると、央寺くんは少し黙ったあとで、
『あー……いや、電話やめたい、って言いたかったわけじゃなくて』
 と言った。

「えっ?」
『だって、俺も不眠症解消のためにつきあってもらってるわけだし』
「あ……あぁ……」
『つーか……』

 電話の向こうの央寺くんの声に、わずかに笑い声が混ざりはじめる。

『今、姫野、めっちゃしゃべってた。あんなに話してくれるの初めてじゃない?……ちょっとおもしろい』
「…………」

 穴があったら入りたいとは、こういうことを言うのだろう。会話をやり直したい。
 電話越しでよかった。今の私の顔ははずかしさでお風呂でのぼせたようになっている。

 でも、どういうことだろう。本当は央寺くんとは一番関わりたくなかったはずなのに、今、とっさに電話を続けたいと発言した自分がいる。それはたしかだ。

 なんか、私……。

『姫野? 怒った?』
「……お、怒って、ない」

 ……最近、矛盾だらけだ。