『何? 大丈夫?』
「う……ん、んんっ、ごめん」
『まぁ、でもちょっと安心した。久しぶりに姫野を見て、いじめられてないか心配だったから』
 
 央寺くんの穏やかな声が、私の慌てた心を落ち着かせてくれる。最初の頃より、その声に温度を感じはじめてきたのは気のせいだろうか。

「……ないよ。大丈夫」

 そう返して、私はまた見えるわけないのにゆっくり首を振った。

『極度な人見知りで緊張しやすいだけなのかもな。学校でも慣れたヤツなら、自然にしゃべれてるってことだし、今、やっと俺ともちゃんと話ができるようになってきてるし。それなら……』

 ……あ、この流れは……。央寺くんが話そうとしていることを感じ取って、心臓が大きく鳴る。

『こういうふうに、電話……』
「続けてほしい」
『……え?』

 ……あれ? 今、私は何を……。

「あ、いや、えと……ごめん。私、い、いじめられてはないけど、あの、見栄張っちゃったんだ。私、いつもこんなだし、実は学校でちゃんと話せるのは二、三人しかいなくて……で、でも、こうやって央寺くんと話をする練習を始めてから、その気になる人ともちょっとずつ話ができるようになってきたし、こ、この調子でほかの人とも話ができるような気がしてるし。効果が出てきてるから、も、もう少し……」