『で? 何話すの?』

 電話口の央寺くんにそう切り出され、私はハッと我に返った。

 とくに話したい内容は思い浮かばず、
「……じゃ、じゃあ、ひ、柊ヶ丘高校って、どう?」
 と、漠然とした質問を投げかける。

『どうって?』
「楽しい? 可愛い子とかたくさんいるんじゃない? ていうか、彼女とかいたりして」
 
普段ならこんなこと言わないのに、なぜだか次々に言葉が口をついて出てくる。央寺くんには見えないのに頭を掻いて、「ハハハ」と作り笑いをしながら尋ねる。

 すると、央寺くんは、
『……なんか、昨日の関谷みたいだね』
 と、不審そうに言ってきた。

「あっ、あれ? ごめん」
『いない』
「え? 可愛い子が?」
『いや、彼女』
「あ……そっか。そうなんだ」