「姫野はあと十分で……俺らは十五分くらいだ」
「うえー。なげーよ、律ちゃん。俺ハラへってるから、どっか食べに行こうよ。バイトしてるから金持ちだろ?」
「たかるな。十五分はすぐだろ。待て」
「ふあーい」

 関谷くんは誰にでも明るくて人懐っこくて、バカ正直な人だ。言ったら失礼だけれど、悩みなんてなさそうに思える。

「ねーねー、ヒメはさ、またこっちに引っ越して戻ってきたの?」

 央寺くんをはさんで三人でベンチに座ると、央寺くん越しにひょいっと顔をこちらへ出して聞いてきた関谷くん。カーキ色のウィンドブレーカーは大きめで、肌寒いからなのかフードまでかぶっている。

「いや……引っ越し先が隣の市だったから……こ、ここまでバスでそんなにかからないから」
「へぇー。高校、どこ?」
「椿坂……」

 そう答えると、関谷くんは表情を明るくして、両手の人差し指をこちらに向ける。

「マジ? バスケ強いとこじゃん。なんか、うちの顧問、そこのバスケ部顧問と仲がいいみたいで、よく話してるよ」
「そ、そうなんだ」

 まったく興味がないけれど、無理して口角を上げて相槌を打つ。