「あっ」
「大丈夫。やり直していいから、ここ押して、その後でここをタッチして、そんで……」

 翌日の日曜日。在庫管理のタッチパネルの画面操作を教わりながら、接客をする。お客さんであるお姉さんも、私の“研修中”と記入されたネームを見て、ニコニコしながら待っていてくれている。

「ご要望の書籍は、明後日入荷する予定です。誠にすみませんが……」

 焦りながらも昨日もらったマニュアルにあった説明をして、帰っていく彼女に、
「ありがとうございました。またお越しくださいませっ」
 と、深いお辞儀をする。

「……ふぅ」

 レジ周りにお客さんがいったん誰もいなくなり、額の汗をぬぐうと、隣の央寺くんが、
「声、昨日より出てるね」
 と言った。

 私はその言葉でまた声が小さくなり、
「……ありがとう」
 と消え入りそうな返事をした。