私たちふたりは、机ひとつ分をはさんだ横に同じ列だった。上が体操服の白シャツ、下がジャージという同じいでたちで、とくに何をするでもなく座って待つ。遠くで、飛行機が飛んでいる音が聞こえた。

『……』
『……』

 今まで話したことなんてなかったから、何を話せばいいのかわからない。席が近いから視界に入ることもあって、十五分という時間が体感では一時間くらいにも感じて、気まずい。沈黙が怖くて、私はとにかく何か話さないとという衝動にかられた。

『お、おはよう』
『……今?』
『い……言ってなかったから』
『…………おはよ』

 そう言ったあとに少し間があく。『ふ』という笑い声が聞こえて央寺くんを見たら、腕で口をぬぐうように押さえていた。

『姫野と話すの、初めてだっけ?』
『……うん、そうかも』

 あまり笑わないクールな印象があったから、意外だった。自分たちのせいではないにせよ、間抜けな状況だからか、いつもは感じない妙な親近感がある。