「ていうか、で、電話とか、いつでもやめていいから。あの、ほら、悪いなっていうか、効果もあるんだかないんだか」
「あるでしょ。今もほら。さっきは改善してないなんて言ったけど、話せてるじゃん」
「……そ、そうかな?」

 たしかに一週間前と比べたら少しは会話ができるようになっているとは思うけれど、それでも人並みにまでは達していない気がして、面目なく思う。

「それに、俺の不眠症改善っていう副産物があるって言った」
「……まぁ」
「それに、将棋を指してくれる人ほかにいないし。迷惑なら、やめるけど」

 そう言われたら、やっぱり断れない。だって私は、迷惑だなんて思ってない。

「じゃ……じゃあ……今後もよろしくお願いします」

 表情を変えずに「うん」とひとこと返した央寺くん。けれど、その声が少し優しく響いたように感じた。