「多分、今日渡したマニュアルにも書いたと思うんだけど」
「……うん」
「今日みたいに自分で対処できない状況になった時は、ひとまずすぐスタッフコールボタン押して店長呼び出して。俺がレジから抜けられない時もあるし、姫野はまだ新米なんだから、店長をばんばん利用して大丈夫だから」
「……うん」
「あとは、万引きとか発見した時もまずは誰かを呼んで。変な言いがかりつけてくる人もいるだろうから、店長か、男の店員に声かけて」
「……はい」
「ほかは……まぁ、おいおいでいいとして、とにかく慣れと笑顔と声かな。最初よりだいぶよくなったとは思うけど」
たしかに央寺くんはお客さんに対してちゃんと笑顔だ。……私にはあまり笑顔を向けないけれど。
バス停の停留所のベンチで、私は央寺くんの言葉をひたすらメモしていた。あの後、お客さんがひっきりなしに来たこともあって、ゆっくり説明を受ける時間がなかったから、このバスの待ち時間を使って教わっているところだ。