「これ、ソーイングセットだから、渡して」
小声で言うと、「は?」と言った頼子が、
「自分で言いなさいよ。殿村くん、よかったわね。和奈が持ってたわよ、ソーイングセット」
と、会話を私から殿村くんへとパスした。
「え? マジ? 助かるわー、ありがとう姫野さん。てか、今まであんまり話したことなかったよね?」
急に近寄られたものだから、私は瞬時に赤面して、
「いや、えと、あの……」
と、どもる。
殿村くんは、クラスでも……というか学年全体でも人気者の位置にいて、アイドルのように顔が整っているので、“殿”よりも王子様と言ったほうがしっくりくるような男子だ。
そんな人としゃべるなんて、私にとってはとてつもなくハードルが高くて緊張する。あの出来事が原因で、ただでさえ男子と喋るのは苦手なのに。
「じゃあ、借りていくね」
「ど、どうぞ……」
「てか、姫野さんてことは、“姫”じゃん。俺、“殿”だからさ、よろしく」
そう言って握手を求められ、私の心拍は一層速まった。
小声で言うと、「は?」と言った頼子が、
「自分で言いなさいよ。殿村くん、よかったわね。和奈が持ってたわよ、ソーイングセット」
と、会話を私から殿村くんへとパスした。
「え? マジ? 助かるわー、ありがとう姫野さん。てか、今まであんまり話したことなかったよね?」
急に近寄られたものだから、私は瞬時に赤面して、
「いや、えと、あの……」
と、どもる。
殿村くんは、クラスでも……というか学年全体でも人気者の位置にいて、アイドルのように顔が整っているので、“殿”よりも王子様と言ったほうがしっくりくるような男子だ。
そんな人としゃべるなんて、私にとってはとてつもなくハードルが高くて緊張する。あの出来事が原因で、ただでさえ男子と喋るのは苦手なのに。
「じゃあ、借りていくね」
「ど、どうぞ……」
「てか、姫野さんてことは、“姫”じゃん。俺、“殿”だからさ、よろしく」
そう言って握手を求められ、私の心拍は一層速まった。