それから3日間、同じだった。夜十時半に電話がかかってきて、すぐさま将棋対局をして、決着がつかないまま央寺くんの寝息が聞こえる。その繰り返し。
正直、本当に意味があるのだろうか、と思う。相変わらず電話がかかってくる直前まで緊張しているし、対局に入ると多少は冷静になるものの会話の練習にはなっておらず、四日目に変わったことと言えば、寝落ちではなく「限界だからごめん」と断ってから電話を切ってくれたことだけ。
いつも、対局に夢中になりはじめて、次の手はこうしよう、と考えている最中でそうなる。目的は別なのだけれど、純粋に央寺くんとの対局が楽しくなってきたからこそ、少し不完全燃焼な気持ちもあった。
けれども五日目の金曜日。
「……参りました」
たった四十五分でついた勝負は、私の負けだった。最後までできた喜びよりも、途中までけっこう互角だったこともあって悔しくて、声にもそれが表れていたらしい。