できれば、効果ないかも、とか言って今日限りにしたかった。央寺くんと毎晩電話だなんて、身がもたない。

『うん。だって、ほら、姫野も普通に会話のキャッチボールできてるじゃん』
「将棋の指し手を言うことは、会話じゃないと思うけど……」
『今、しゃべってる』

 そう言われて何も返せないでいると、電話口で央寺くんの寝息が聞こえてきた。

 勝負のつかない対局と、なぜか電話口で央寺くんの寝息を聞いているというこの状況。なんだろう、これ、というモヤモヤで、私は通話終了後のスマホ画面に映った自分の複雑な顔とにらめっこした。